瞳が映す景色
「ま、お互いに頑張ろうね。――、そろそろ行こっか」
「そうだね」
空席待ちの客に目を留めて、どちらからでもなく席を立つ。向かいの席の菜々を見下ろし、今日は奢ると言い切られたお礼に頭を下げた。
「バイト前にバタバタと付き合わせるんだもん。これくらいはさせてよ」
「気にしなくていいのに」
レジへと隊列を組んで歩く。あたしが後方で菜々が先頭なのは、縦に並ぶときの自然な流れ。160後半の身長なあたしと、150以下な菜々での、いつの頃からかの自然な流れとなった。
高校時代から僅かも伸びない菜々の身長は、まだ成長期が始まってないからよと言い張られ、彼女は毎日欠かさず牛乳を飲む。
「菜々。とりあえず何セット買うつもりなの?」
「理想は5、最低3は買わないと当座のサイクル回らないよ。……あ~あ、余計な出費」
けど、牛乳は身長へではなく、胸へと作用されてしまった。
小さな体躯にある意識的平均のそれよりボリュームのある柔らかそうな胸は、近頃手持ちの下着では苦しくてたまらないらしい。……神様は不平等だ、と、あたしは自分を見下ろして溜め息する。下げた視線の先は、地面が何にも遮られることなく見てとれた。
今日は、菜々の下着選びに一緒するのだ。