瞳が映す景色

「……そんなに胸だけ成長したら、もっとマニア受けしちゃうんだからね」


「そんな男は願い下げだもんっ」


広い歩行者専用通りになり、隣に移動してきた菜々は、つんと唇を尖らせて上目遣いで見上げてくる。あたし的上目遣いナンバーワンは、昔から不動だ。


「彼氏も当分いらないし?」


「いらな~い」


この、小さくてふわふわした感触の親友は、超絶じゃないけど言い寄られる割合が多い。殆どが恐怖故に逃げてるけど、中には惹かれる要素のある人物もいるらしく、お付き合いを始めたりもする。


けど、知っている限り、上手く長く続いていない。


菜々の、小さな身体、儚く震える唇やまつ毛に、守ってやらねばと使命感を背負った彼氏は、ひとりで何でも軽々やりきってしまう現実の彼女に夢を打ちのめされ去ってしまったり、意外にハッキリものを言うところが面倒だと浮気をした彼氏もいた。


残りも、数はもう多くないけど、思い出すと腹が立って仕方ないから思い出さない。


彼氏の好みに合わせてゆるふわパーマをかけたりもする可愛さをちゃんと解ってくれる、誠実な誰かと、いつか巡り合ってくれればと願う。堅苦しいくらいの真面目でもいいかもしれない。菜々は、気付かれなかっただけで、好きな人に染まりやすい一面もあるから。

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