瞳が映す景色

駅ビルの下着ショップに入る。アウトレット商品も少し置いてるそのお店は、数を揃えたい今日みたいな日にはもってこいなのだ。


店員さんにサイズを計ってもらってから目ぼしいものを探して店内を物色する。お客が今はあたしたちしか居なくて、店員さんはつきっきりで相談にのってくれる。


「どのようなものをお探しですか?」


店員のお姉さんに質問され、菜々もそれに答える。その様子を見て、今日の人は大丈夫だろうと、あたしは菜々から離れて自分の好みのものはないかと店内をぶらついた。


欲しいものではなく売りたいものだけを薦めてくる店員さんに当たったとき、二人だと断りやすいからと一緒に来たのだ。


店内の一番目立つとこにディスプレイされてある一品の内蔵パットが物凄くリアルな感触で、その気持ち良さに呆けている間に、気付くと菜々は試着室に入っていた。そのカーテンの前まで駆け寄り、小声で問いかける。


「ごめん、菜々。大丈夫だった?だと、思ちゃったから」


「うん。ありがとう。大丈夫だった。ていうか、当たりな感じ」


今日の店員さんのことだろう。すぐそばにあるカウンターテーブルには、買い求めやすい商品が殆ど並ぶ中、ささやかに店のお勧め商品も置いてあって、その加減がちょうど良い。ということは、多分買い物の方も当たりだったんだろう。


店員のお姉さんにあたしもサイズを計ってもらったりしながら、菜々の帰りを待つことにした。

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