瞳が映す景色
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目的通りの買い物を堪能した菜々は、ほくほくとした表情で店をあとにした。見送ってくれた店員のお姉さんは最後まで素敵な微笑みで、いつものあたしなら惚れてしまいそうだった。
けど、今のあたしには、傷に滲みる。
「……サイズ?上がってましたよ。……アンダーがね」
ちなみに、菜々はカップ数が順当に二つアップしていた。
「小町は、背中とか肩とか細すぎるからいいと思うの。あとは、そこかしこから集めて収めれば、それはいずれ胸になっていくと先日テレビが言ってたよ」
「テレビは喋りません」
「細かい修正はいらないから。――前が全部ボタンの服とか着にくいんだよ?割り増しで太って見えちゃうんだよ?」
そんな悩み、一度味わってみたい。
「胸ないと似合わない服だってあるもん」
「ならおあいこ。――でも、さっきの店員さんも小町誉めてたじゃない。姿勢が良くて身体のバランスが素敵だって」
「それは菜々のおかげだもん」
高校で出会った頃、あたしは自分の身長が嫌で嫌で、自然猫背な毎日だった。なんて思春期で可愛らしかったことだろう。
「それだけじゃないと思うけどね。だって、長所を恥じるなんて馬鹿みたいだったから」
出会ったばかりの正反対な身長の菜々に言われ、最初は喧嘩しながらも、お互いの辛さを語り合い、理解し合い、仲良くなった。