瞳が映す景色

身体はこちこちに固まってしまった。


「……えっ、……そうなの?――てか、あたしの愚痴と下着買う短時間に突き止めちゃうとか……」


菜々は、何処ぞの姿はコドモ中身は高校生の小さな名探偵と張り合えるんじゃないだろうか。




あたしの面倒なお客というのは、思い当たるのはひとりしかいない。というか、ひとりしか面倒じゃない。


夜な夜なへろへろでお弁当を買いに来てはあれこれ喋っていく見目麗しい高校教師で、恋する女子高生を誠実扱いせずに奈落に突き落とす男、白鳥誠一。……誠一って、誠実一番って、名前負けもいいとこだと今更感じる。


「……ってことは、こっちに越して来たのも、あの人追いかけて?」


「さあ、知らな~い。私は小町の面倒なお客が好きな人妻が何処に住んでるかも知らないし」


――、あれ?


「……ん?」


話が、上手く繋がらないように感じる。


「それに、見たこともないし」


「えっと……あたし、馬鹿だから菜々さんの意図を汲み取れません」


歩みを止めてしまってから数分。駅ビルの主要通路では邪魔にしかならないと気付き、ちょうど視界に入った休憩スペースのベンチに腰掛けた。


そして、謎は全てではないけど解ける。


全て解けはしないだろう。相手の人妻の全てなんて。


「そういうことも、あり得るってこと」

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