瞳が映す景色
「――さっきの映画って、続くの? ていうか、前もあったりする?」
……、
「……、えっ?」
「なんか、連作みたいだよね。僕たち観てたのって」
人の趣味にとやかく言うつもりはないし、普段なら流してしまう言葉を、まだ興奮冷めやらぬ脳内はしっかり反応してしまった。
まあ、他の乗客がいるエレベーター内で叫ばなかっただけ、誰かに誉めてほしい。
「そんなことも知らないであの映画観てたのっ!?信じらんないっ!わりと最悪っ!今日初日のあんな名作に白鳥さんみたいのがいたなんて残念すぎるっ!!」
「えっ……あれって、そんなに有名なやつだったの?」
密室空間から抜け出たところで洗いざらい不満を口にする。突然怒ったあたしに、白鳥さんはいつもより形のいい唇をパクパクとさせながら焦っていて。
その様子を見て、少し落ち着く。けど、まだ優しくなれないあたしは狭量だ。
「メジャーなだけが価値観なんて、残念ポイント増えましたね」
「……敬語だ……」
「っ」
あたしの失礼な言葉に憤慨するふうでもなく、不満は、いつもと変わらないそれだったから、
「……敬語……」
「っ、……最低ポイント、倍増だよ」
「ははっ。さっきよりも増えてるじゃないかぁ」
捨て犬眼で見下ろされてしまっては、通常営業に戻らざるをえなくなった。
というか、なんていうか……。