瞳が映す景色

「パンフレットだけど、見せてあげないからね。……連作のを途中からなんて見せたげない」


「厳しいなぁ」


「心狭いもので。――はい、荷物全部渡して。次は白鳥さん」


こっちは重いからと、白鳥さんは資料と配布物が詰まった手提げ袋は地面に置き足の間に挟んでしまった。貴重品の入った鞄だけを預けられる。


「持てるよ?」


「いいからいいから」


やんわりとあたしの負けん気を断りながら、白鳥さんは黒いダウンを着込む。最近買ったと先日見せびらかされたそれは、相変わらず質の良さげな。


「……何?」


自分の荷物を引き取ったあと、何故か全身をくまなくチェックされ合掌される。


「いや。――お洒落は初めて見たなって」


「仕事でお洒落はしないでしょ」


「だね。今日は頑張ってきた感じ?」


指摘されるのは、気恥ずかしい。


今日のあたしの服装は、グリーンの胸下切り替えの膝丈ワンピース。普段着ない色だったけど、菜々や店員さんに絶賛され、あたしもその気になってしまった。まあでも、気持ちは乗せられたまま、わりとお気に入りなんだけど。コートは福袋からのもので、すっきりしたラインのベージュ。靴はヒール三センチの黒いブーツに同色のタイツ。


「ピアス穴、空けてたんだね」


「……仕事中は、つけないからね」



「偉いね。ちゃんと外してるんだ。――そういえば、指輪も一度、外し忘れてたことあったね」


「そう、だっけ?」


「うん。だよ」
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