瞳が映す景色
凍りついてしまい振り向けないオレの代わりに、ご丁寧にも目の前へと回り込んできてくれるのは、藁科ことは。オレが副担任を務めるクラスの女生徒。昨日、オレに愛の告白をしてきた。
「看板、回収にやって来ました」
……忘れてた。オレがそうしたのに。職員室にいれば良かった畜生と悔やむ。
藁科は一瞬たりともオレから視線を外さない……多分。オレはそっちを見ていないから。
「昨日は驚きましたか?」
「……えっ? てことはやっぱりドッキリ?」
すると途端に腹が減ってきた。なにせ昨夜は食が細かったんだ。
「いいえ。……そんなに、喜ばないで下さい」
その声は、その表情も、潤んでいて……昨日と一緒だ。
藁科の左手の包帯が、昨日の現実を手繰り寄せる。
「いや、すまない。けどそう思うだろ? いきなりあんな……無理だし」
「いきなりって……じゃあ、今までそれとなく気持ちを匂わせておいたら良かったですか? 無理だって……教師と生徒じゃなかったら受け入れてくれましたかっ?」
「っ、それは……少なくとも、こんな状況にはなってないだろうし」
あんなことになる前に逃げられただろう。