瞳が映す景色
「当然」
あとは帰るだけだ。
「ふ~ん。――――あっ!?」
「えっ、何っ?」
もう駅の構内に足を踏み入れる寸前、改札だって視界に入ってたというところで白鳥さんが奇声を発したものだから、思わず足を止めてしまった。
「さっきの映画、最初の方はもう販売されてるの?」
立ち止まった白鳥さんが見る方向には、某有名チェーンのレンタル店があって。
「……この前発売されたけど」
「じゃあさ、ちょっとどれか教えてよ。僕、タイトルうろ覚えでさ。あっでもね、飛び込みだったのは事実だけど、惹かれたから観たいんだよ」
面倒なことを、失礼な言葉他諸々と共に言うものだ。
決して、手をぐいぐいと引かれて連れていかれるようなことはされない。けど、興味を持ってもらえたのは嬉しかったから、
「――、仕方、ないなあ」
「うん。ありがとうね」
駅にくるりと背を向けて、今度はあたしが白鳥さんを追い掛けるように。けど、それは束の間で、歩調はすぐに緩やかとなり、並んで数十メートル先のレンタル店を目指した。
「……白鳥さんって、根がナンパだよね。さりげない気遣いとか鬱陶しい」
合わせられた歩調始め、車道側は男性だとか他にも、短い間の中で此方が気付くようにしてくる様は、フェミニストではなく、そちらだ。
「誉められたっ」
……事務的に事を済ませて、早く帰ろうと思った。