瞳が映す景色
――、
目的のDVDはレンタル中だった。
「Blu-rayなら、あたし持ってるけど?」
新作コーナーをしゃがみこんで下の段まで確かめてみたけど、当然だ、同じ作品がまばらに並べてあるわけはなく。
「あ~僕んち、今デッキ壊れてて」
「だったら何処で観るつもりだったのよ」
「かこつけてゲンちゃんの家に行くのも案かなと」
同性の同僚教師宅に上がり込む算段を、語尾に音符マークが付くようなテンションで話さないでほしい。
まあ、人妻宅よりは健全か。――、いや。逆なのか。複雑すぎて分からない。
「ありがとう。ゲンちゃんちはBlu-ray対応じゃないかもしれないし、タイトルとか覚えたから大丈夫。そのうちレポート出すよ」
「いらない」
「英語だから訳してね」
「……」
英語は嫌いだ。中学一年生一学期で早くも拒否反応を示してしまい、なんとかここまで乗り切ってこられた。
「高校のとき……taxとはなんだってうつらうつらしてたときに先生に指されて、ファックスの仲間だって言って頭教科書で叩かれて教室中に笑われてこの上なく嫌いになった」
「ぶっ!!」
レンタルの棚に手をついて支えをとりながら笑われる。
「だから白鳥さんも嫌~い」
「ははっ。ひっ、酷いけど微笑ましい光景じゃないかぁ。――大丈夫大丈夫。他の先生の英語の授業でもあった話だからよくある間違いだって~」