瞳が映す景色
今度こそ用は済んだから帰ろうとすると、他はないのかと訊ねられる。
「二章は、確か再来月発売」
「うん。――他の作品で構わないから、きみのお薦めは?」
「あたしの?」
「そう」
ちなみにと、白鳥さんは新作コーナーを抜けて奥へと進んでいく。
「ちょっ」
「早く早く」
手招きをされた先はアクションの棚で、まあ、男の人には順当だ。けど、白鳥さんご推薦はもう何度もテレビ放送されているもので、あまり映画を観ない人なんだと再確認するだけだった。
「そうだねぇ。ストレス発散的消化活動なら派手なほうがいいでしょう」
「あたしの、派手じゃないよ?」
「用途が違うよ。ちゃんと観賞がしてみたいんだ。今日の映画と同じ感触のが希望だな」
なら、いいか。
隣の列の邦画コーナーに移動する。その最奥は、一列移動しただけ、同じ蛍光灯の下のはずなのに空気が静かだ。人が居ないのもあるかもしれないけど、マイナーがそうさせるのかもしれない。
「聞いたことないタイトルばかりだな」
「メジャーなのって、PR活動見てるだけでお腹いっぱいになる」
「ああ。なんとなく解るよ」
感覚的なことを頷いてもらえるのは嬉しい。
特別に、個人的お薦めを二つ紹介してあげた。それにプラス、アクションものを一つ、白鳥さんはレジカウンターに運んでいく。レンタルの日数に加えて、郵送での返却を申し込んでいた。