瞳が映す景色

「――、今だってどうだ? 誰かがもし聞いてたらとか考えなしだよな。藁科は」


「安心して下さい。学校では、絶対に片山先生の不利益になるような行動はとりません」


「それをどう信じられる?」


冷たく、適度に傷つけることしか思い浮かばない。こんな時オレはどうしたらいい? 教師としても、男としても、なんという中途半端な答え方をしているんだろう。


いや……男はいらないだろ。


そんなオレの前で俯いてしまった藁科は、今どんな表情をしているのか。


「藁科……」


でも、オレが何を言えるだろう。


「伝えるっ……タイミングは、あれがベストだったかと問われれば、私のミス。まだまだ修行が足りなかったです。あんなふうに気づかれるつもりはなかったんです」


そのわりには、昨日の藁科はわかりやすすぎた。けど……、


修行なんて、そんなことはしなくていいから。藁科みたいな子なら、もっと楽な恋愛をしても、それを最上なものに出来るだろうから。


顔を上げた藁科は、深い茶色の瞳の奥に強い意志を宿していた。

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