瞳が映す景色
「勿論、振られるのは想定済みだったし、それが更に、僕を覆してくれたんだけどね」
「藁科さんは……ゲンちゃん、とは?」
悲しむ女の子は一人でも少ないほうがいい。
けど、語られる声色は……。それがまた勝手に思えて腹が立った。
「駄目、だったみたいかな。前話したときはまだ分かんないって思ってたけど、もうその頃から、そうだったのかなぁ」
まるで上手くいけばよかったみたいな。本当に腹が立つ。自分以外には柔軟なんて。
ああ。違う。
きっと、藁科さんだから。ゲンちゃんだから。二人のことだから。
ひと結び、ごみ袋の口を強く引く。
「前、助言してくれたでしょう。教師の域越えて助けてあげなって」
「……どこが助けたことになるの」
「元気づけたかった。告白は話の流れで。スキル無いね、僕」
「そうだね。藁科さんは元気になった?」
「いいや。ならなかった」
「当然、だよ」
「うん。だよね」
「本当に残念な男」
心の声は気づかないうちに外へと飛び出していて。白鳥さんは、ベンチの背もたれに上体を反らしながら気まずそうに微笑んでいた。
「藁科には、とても僕なりに感謝をしていて。恋愛じゃないけど、愛しい子だったよ」
ふた結び。
何重にも、もう結び目なんか作れないくらい、あたしはごみ袋の口を縛った。