瞳が映す景色
……、
「えっと……大吉って……」
「ご、めん、ごめんなさい。こっちの話」
「そう?」
そうして、あたしは頷く。
「うん。――だから言ってたでしょ。あたしだって前から」
白鳥さんが藁科さんから教わったことは、あたしもずっと言ってたこと。
それはきっと、あたし以外からも少なからずは言われていただろう。どれもこれも、何ひとつ白鳥さんの中には残っていないだろうけど。
「もう信じられる?」
「うん。どの程度かは不明だけど」
「例えば、誰か生徒が一目惚れをしたとしても?」
「一概には否定しない」
そっか。
ならば……
「例えば――別に仕方がない状況下で白鳥さんがその誰かな彼女を助けていて、それが、仕方がない状況下だと彼女だって解ってはいるけど嬉しくてもっと好きになられても?」
「う~ん。ちょっと説明が下手だねぇ。――うん、でも」
白鳥さんは頷く。
そっ、か。
「意外に努力家で仕事熱心な一面を偶然に垣間見てしまって、彼女はもっと、苦しいくらいに好きになってしまって、ついには想いを伝えてしまっても?」
伝えられることを想像したんだろうか。白鳥さんは一度身を固くさせて、そうして、頷いたまま、もっと頷いた。
「もう、あんなふうに、傷付けるだけの断り方は、出来ないかな」
そっ、か。
そうなんだ。