瞳が映す景色

②ー5・ブラックボックス

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②ー5・ブラックボックス
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――……



四年と半年、それともう少しほど前。



まだ、恥ずかしながら初恋も知らず、小さな頃からこだわり続けていた、腰近くまである長い髪を毎日丁寧に手入れしていたあたしは、あの頃、高校二年生だった。


五月。


ゴールデンウィークも終わり、次の日曜日。快晴。あたしたちの通う高校では体育祭真っ盛りだった。


「う~……」


朝から、……いや、一週間前から食は細くなり、昨日の夜から固形物はほとんど食べることが出来ていなかった。


「大丈夫?小町」


「朝も食べれてなかったっしょ?」


「……うん」


傍らで菜々と雅が心配そうに見上げてくれる。


時刻はちょうど正午。体育祭午後の部に向けて、通常授業よりも余裕のある昼休み。


午後一に行われる、応援合戦の赤組団長というプレッシャーにやっと腹を括ったは良かったけど、お腹は最高潮に減ってきてしまった。


「お弁当忘れるなんて最悪……」


購買は今日はお休み。はす向かいのコンビニは、何故日曜なんかにリニューアル中なんだ、こちらも休み。山の中腹にあるこの高校の周囲には、他に食料調達の場所はなく。


このままでは合戦の第一声、団長の決意表明によるスタートにも影響してしまう。教室で考えあぐねていたところ、


「あっ!!」


雅が名案だと、菜々とあたしの手をとり職員室へと引っ張っていった。


以前、雅は見たのだと言う。職員室の戸棚のひとつから、先生の誰かが共有の非常食、カップ麺を出しているところを。

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