瞳が映す景色
雅の渾身の訴えが響いたのか、あれよあれよという間にあたしたち三人は車の後部座席に並んでいた。
「誰にも内緒だし、今回だけの特別措置だからね」
通勤手段だという青い車のハンドルを握り、今回だけだと何度も念を押しながら、あたしたちを別の離れたコンビニに連れていってくれたのが、白鳥先生だった。
「本当にすみません」
「今回だけだけど、いいよ~。赤組団長には期待してるんだよね」
その頃、白鳥先生は一年生としか絡みがなく、校内でたまに見かける、あれが噂の告白断罪人だという認識しかなかった。
「……期待?」
「あっ、白鳥先生も赤組だったよねぇ」
「そうだよ~。――オフレコだけど、今日の勝ちがどちらかで、教員お疲れさま会会費の割合が変わるんだ。あ、本当に秘密でよろしくね」
バックミラー越しに白鳥先生と目が合う。すると、眉を下げて謝られてしまった。
「ごめんごめん。誤解させたね。飲み会云々は抜いて、純粋に応援してるよ。僕、負けるの大嫌いなんだ」
「そっ、そんなこと思ってませんっ」
「ん、なら良かった。士気を下げるのは本意じゃないから」
お腹いっぱいにして頑張ろうね――ミラー越しの細められた目に居心地の悪さを感じて、小さく応えることしか出来なかった。
続くものなど何もなく。屈託のない雅が、コンビニに到着するまでの残りの時間、白鳥先生と楽しげに会話していた。