瞳が映す景色

「はい。到着だよ~」


車を一番目立たない空スペースに停車させると、白鳥先生は早く教室に戻るようにあたしたちを急かす。


「ありがとねぇ。白鳥先生っ」


「どうもありがとうございました」


「ありがとうございました」


時刻を確認すると、そろそろご飯を急いで食べなければいけない時間で。もう一度会釈をしてから駆け足した。


「あっ!!」


十メートルほど進み、忘れ事に気付く。


「小町?」


「ごめんっ。忘れものだから先行ってて」


その場駆け足の菜々と雅を残して、まだ居てくれるだろうかと青い車の元へと引き返す。


太陽は頭の真上で、気持ちはいいけど眩しすぎる。初夏な陽気に日焼け止めをもう一度塗らなければと頭の片隅に記憶した。




「白鳥先生っ」


先生は、職員用の通用口に向かっているところだった。さっきコンビニで買ったのか、焼きそばパンを頬張りながら振り向くと、飲み込んだあとにバツの悪そうな表情をする。帰りの車内で、食事は教室でと雅をたしなめていたばかりだったからだ。


「……」


「ん?どうしたの?」


大した距離でもないのに息は切れていた。


「あっ、あの……これお礼ですっ。ありがとうございました」

あたしは、さっき買ったプリン三つのうち一つを白鳥先生に差し出した。


「白鳥先生のおかげで午後も頑張れます」


「えっ?あ~……それ……」


差し出したままのプリンは、受け取らないと、手にも取ってもらえなかった。

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