瞳が映す景色

プリンは嫌いだったとか……失敗した。コーヒーゼリーあたりにしておけば良かった。ていうか大人の男の人に甘いものはそもそも……。


軽く、受け取ってもらえると思い込んでいたあたしの腕は、差し出したまま行き場をなくして固まってしまった。


「あっ……余計なこと……すみませんでした」


独りよがりに恥ずかしくなってしまい、とりあえず謝って逃げ出そうとした。


「――プリンは嫌いじゃあないけど、生徒から、一律で何も貰わないようにしてるんだ。ごめんね。お詫びにこれをあげるよ」


けど、理由を説明され、逆に、強引に渡されたものにまた疑問が浮かんできて、白鳥先生を見上げる。


「一律で貰わないのに、逆はいいんですか?」


ぼうっと、心の中では見上げるという行為があまりなくて新鮮で、それに密かに感動していた。


白鳥先生から渡されたものはスポーツドリンクで、それはまだ、カチンコチンに凍っていて。


「……コンビニ?」


「そうだよ~。先生としての救護。君、少しじとっとした汗をずっと滲ませてたから。今日は暑い」


言われて気付く。おでこを触ると、塩分の濃そうな汗をかいていた。


「危険度はそんなにないし、棄権はしたくないだろうし、と買ったんだけど渡しそびれたから、どうしようかとしてたところ」


「あっ」


「他の二人にはないから内緒ね。言い触らしちゃいそうな子と針鼠みたいな警戒してた子だったから控えておいたんだ」

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