瞳が映す景色

――……


体育祭から二日後。


昨日は振り替え休日で、今日は、午前は体育祭の後片付けだった。


ずっと動いていて疲れたのか、午後の通常授業は居眠りばかりだった。英会話を流暢に話す先生は外見がお坊様みたい、一年生のときにこの先生にクラス皆の前でめちゃくちゃ怒られてから、あたしは苦手。


嫌いな英語に苦手な先生なのに、恐れよりも眠気が勝る。


お気に入りの窓側最後尾の席から見える外の世界は、ここ数日快晴の空が広がり、何処かから雀の囀ずる声がする。蟹みたいな雲が、小さくひとつ流れていた。


気持ちよすぎて船を漕いでしまいそうになり頭を振ると、そうだよね、クラスメイトの半数近くはあたしと同じような状況で。


教室内には、うつらうつらとした空気と、響く読経。


またこの先生に怒られるのは歓迎しない。


眠気を覚ます為、――それと、これをどうしようかと、机の中に手を入れながら、兄に無理矢理渡されたものを触った。


……生徒からは何も受け取らない先生だって伝えたのに嫌がらせだ。兄は昨夜、酔っぱらいの嫌味な奴だった。自分が作ったお弁当を忘れていった腹いせなんだ。おかずには、菜々たちにも感想を聞かせてほしい試作品が入っていたものだから。


……こういう、一度じゃ言葉の意味を理解できなかったみたいな、押し付けがましい、無理強いなこと、嫌なのに。


どうしたものかと、授業に集中しないまま、放課後を待った。

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