瞳が映す景色
「先生はそういうの受け取らないって散々言ったのに。酔っ払いって、なんであんなに押しが強いのか横暴なのか……妹をお昼ご飯にありつかせてくれたお礼だそうです」
「いいじゃないか、陽気に酔えて。僕なんかすぐフラフラになって眠たくなるんだ」
言いながら、白鳥先生はポケットを探ったあと、ジャージを捲り、晒された色白な腕でおでこの汗を拭う。
「ペンも用紙も揃ってるので、ここでささっとお願いします」
「うん了解~。っと、その前に喉渇いたから」
さっき拭ったばかりのおでこには、もう次の汗を伝わせていた。それを見て思い出す。体育祭のときのあたしの嫌な汗に気付いてくれたことを。
白鳥先生は大丈夫そう。色白だから、こんな陽気の草むしりなんて致死レベルかとも思ったけど杞憂だったみたいだ。
今日も空は快晴で、季節は少しずつ夏へと向かっている。
――だから、あれは危険物だったに違いないのに、白鳥先生もあたしも初夏の太陽にやられていたのか気付けなかった。
喉が渇いたからと、白鳥先生は予め持ってきていたペットボトルを取りに行く。
そこは、置いたときには日陰だったんだろうけど、すぐに日光降り注ぐコンクリートの上となっていたと推測する。一度手から滑り落ちたのに気にもせず、白鳥先生は未開封のペットボトルの蓋を思いきり回した。飲料の種類は、炭酸水だったというのに。
案の定、白鳥先生は、温められ揺すられ暴発した炭酸水を頭の上から浴びてしまって……。
「……」
「……、もうちょっとだけ待っててね」
双方とも、特にリアクションもなく起きたアクシデント。白鳥先生は髪を絞り、喉はまあまあ潤ったと気持ち良さそうだった。