瞳が映す景色
きっと、生徒と付き合った教師なんて、倫理云々はともかく探せばすぐにぶつかるだろう。
だから何だと問われれば単に実情を知るということだけだが……。
彼女がずっといなかったわけじゃないから、恋愛の対処法もなんとなくは探れるが……ここまでしつこくなんてことはなかったから戸惑う。
藁科を傷つけることなく、どうやってお互い平穏な日々を送れるようになるのかを模索した。
「海堂……これは、なんだ?」
あれも大問題だが、今は目の前の問題を優先しよう。
文化祭最終日。クラスの模擬店もつつがなく終了し、残すは後夜祭のみ。ひと息つこうと、教科準備室で腰を落ち着けた時だった。
「団子だ。オレは団子がいいぞ」
「それはムリッ!」
気分も悪くなってきたというのに、海堂ににべもなく断られる。
「……和風カフェに、何故アップルパイがあるんだよ」
「あんこ、入ってるだろ? なんか余っちゃってさー。他は完売なんだぜ。俺たちスゲェ! 先生、前に林檎好きだって言ってたから」
「……どうでもいいことばかり記憶して……。オレの好みより、学問を覚えろよ」
「俺って優しいな、って言いたいとこだけど、ホントはみんなに配ってたりして。――じゃ、しっかり食べてよ、先生。クラス一同からでしたっ」