瞳が映す景色

……


『厚意』を、『好意』と解釈してしまいそうになるくらいには、白鳥さんの声はそんなふうで、傷付けてしまったんだと後悔した。


最近の白鳥さんは、傷付くほどに優しくなる。傷むごとに、纏う雰囲気に労りを込める。


耐えられなくて挫けそうで、人に示して自分にもそうしてくれと、欲しがるんだ。


上手く距離を計れないから、弱さの伝えかたが下手くそで。


「万人に厚意向けてちゃ、ストーカーまみれになっちゃうよ。向けるのは好意ひとつでいいよ」


「ふ~ん。――じゃあ、これは貰ってくれるよね。ここには僕以外にひとりしかいないんだから、気持ちは汲んでもらわなきゃ」


「だから……っ」


「はい、どうぞ。大切に保管できるだろう人の手にあったほうが、僕も嬉しい」


丸め込まれ、ポストカードは賞状みたいに受け渡されてしまった。


「あ、りがとう」


「残りの最終章のとき、またオールナイトやるっぽいよ。監督がそう希望してた」


「そうなんだ。でも、さすがにオールナイトは反対されちゃうんだよね」


ポストカードからは、白鳥さんの辞書の匂いがした。


「あっ、やっぱり行こうとはしてたんだね。女の子ひとりは、僕でも反対するよ」


「今度は友達連れてくって交渉する」


「行けるといいね。でも、それでも心配だから、僕がストーカーちっくに映画館の隅から見守ってあげよう」


「それいらない」


「往復を、ご家族に秘密で送迎してあげよう。友達も一緒に車乗せてってあげる~」


「――車、あったの?」


「今は実家だけどね~。母と妹が主みたくなってるよ」


脳裏に、あの青い車がよぎった。

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