瞳が映す景色

しきりに謝り倒した韮崎は、向こうから幹事を呼ぶ声に面倒臭いと立ち上がり、今いる場所から一番遠い席に歩き始めた。


置き土産だと、残った枝豆の処理と、横を通り過ぎる際、あたしの頭頂部をぐしゃぐしゃに捏ねていきながら。


「もうっ」


「酔っ払ってふらついたから仕方ねえだろ。じゃあな」




韮崎が去ると、ようやく菜々の腕の力が弱まった。これでやっと苦しくなくなる。


「菜々。韮崎に冷たくない? あんなに菜々が好きなのに」


隣に並び直した菜々は、一瞬目を見開き不機嫌になっていく。


「あれは愛玩的扱いなだけ。ち……」


「ち?」


「……小さい、もの、大好きじゃない、韮崎くん。」


小さいと自ら自分を表現するのが屈辱的だったのか、とばっちりで睨まれる。


そういえば、前に見せてもらった韮崎の家の写真には、踏み潰してしまいそうな小さなトイプードルと、歳の離れた小さな可愛い妹が写ったものがあった。あれがナンバーワンの素材だと自慢されたっけ。


「そういえば、前に菜々を遠目で見ながら、トイプードルのような見た目と、決してなついてこない柴犬のようなクールさがいいって言ってたかも」


「……。そんな愛玩的を、恋愛と結びつけるような人じゃないでしょ、韮崎くんは」


「そう?」


「小町のバカ……」


「韮崎いい人だから、菜々が付き合えるとかなら結構いいんじゃないかって思ってたの。少なくとも今までのとは比べ物になら……っ」


頬っぺたを突然つねられ、言葉は最後まで続けさせてもらえなかった。


「――韮崎くんは、小町から見て、いい彼氏になると思える人?」


またとばっちりなのか、とても不機嫌に問われた。

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