瞳が映す景色

――――
――


手を握られている。……握られてるっ!?


そのままくすぐられるように動かされ、あたしの指に韮崎のそれが絡められる。


えっ……どうして、こうなってるんだろう。


酔っ払った脳みそじゃ、その着々と進められる行為に思考なんか追い付いてくれなかった。






――……二次会終わり。三次会を希望して駄々をこねるあたしをよそに、皆それぞれの駅やバス停を目指し散々とし始めたとき、誰の目にも留まることなく、韮崎に腕を取られた。


そのまま狭い裏道に引っ張られ、よろめいたと思ったら、助ける以上の包まれかたで、あたしは韮崎に抱きしめられていた。


驚いて、勢いよく離れようとしたけど、手を掴まれて距離は少ししか離れられなかった。……――






「韮崎っ……手、痛い……」


掴まれた部分は酷く熱を持ち、僅かな痛みを倍増させる。


「ごめん――」


けれど、その手は離されることなく、労るみたいに握り直されて。


「韮崎、あたし、そんな酔ってないから、大丈夫」


握り直されたあと、恋人みたいに指を絡められて、囁かれた――。


「――そんなに帰りたくないなら、俺と一晩中一緒にいてくれ」


「っ!?」


驚愕の一言に韮崎を見れば、耳を真っ赤にさせてあたしから視線を外し、裏道の先に逸らせる。


韮崎の視線の先には、駅前の裏道らしく、密やかで恥ずかしくて艶かしいホテルのネオンが、誰かを誘い込もうと光っていた。


何軒も連なるその幾つかは、所々看板のネオンが消えている。知識によればそれは満室のことで。


みんなこうやって、今のあたしたちみたいに誘惑されたんだろうか。


「泊まってく?」


問うてきた韮崎は、あたしを一歩、自分へと引き寄せた。

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