瞳が映す景色

最低だ。情けない。人でなし。ろくでなし。あたしはもう、なんて酷いんだろう。


菜々を、たとえ違う人だったとしても、韮崎が誰かを想っているとしていた状況で、あたしはそれを頭の片隅にも考えないで、勝手に楽になれるかもしれないって、利用しようとした。


韮崎の本気なんて思いもしないで、楽になりたがろうとした。お互い様なのだからと勝手な免罪符を作って。


優しい優しい韮崎なら、全てを許されると。


「ごめ……っ、韮崎……」


「小町が謝ることなんてない」


なのに、韮崎はやっぱり許してくれる。あたしの汚い打算を打ち明けても頭をこんなに優しく撫でてくれる。


卑怯にも涙は止まらない。自虐的なそれは、韮崎の温かい手のひらに癒される。すがった先に安心があることを実感した。昨日までは嫌悪していただろうことなのに。


「俺だって、酔った勢いみたいなとこあったし、小町が勘違いしてもおかしくない言い方した」


「でも……っ」


「ずっと、一途にいたわけでもない。誠実でもない。彼女がいたことだって何回かあるし、友達として想ってたこともある。好きだなって感じてたときも、けど、奪いたいとか激しくもなかった。小町といると楽しくて楽しくて、それだけで満たされたりもして。……だから、はっきりさせようとはしなかった」


ほら、自分だって狡いだろうと、韮崎はあたしのところまで堕ちてこようとしてくれることに、また涙は止まらなかった。


「けど、俺は小町がやっぱ大事だよ。――すがりたくなることはあるさ。それが、俺でよかった、俺以外は嫌だと思うくらいには小町が好きだ。つけこんで、このままずっと小町を大切にしていく自信はあるけど、つけこまれて、小町が後ろめたく感じて去られるのにも怯えるくらい真剣だ」

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