瞳が映す景色
「好きだって、認められて良かったじゃない」
だから涙はとまったのだと菜々は言う。あたしは、それに頷く。
反発力が強すぎていずれ引き千切られる痛みを訴えていたんだと、今は認める。
「でも――、きっとこれからも泣くことはあるんだろうね」
種類は違うものになるんだろうけど。
あたしはそれを、今度は抱きしめてあげようと思う。
「違うよ。小町」
もうすぐであたしの家に到着する。そんな場所で菜々は立ち止まって口ごもった。違うよ、とまた独りごちるみたいに。
「何が?」
「泣かなくなる方法なんて、あるに決まってるじゃない」
それが最良だと、菜々は言った。
分からない。じゃあ、なんで認めさせて苦しませるの。
「認めてからじゃないと、先になんて進めないじゃない。今うやむやにしても、小町はまた白鳥先生を好きになる」
好きだよ。辛くても何があっても、どうしても好きになって。やっと、認められたのに、
「もう、すぐにでも、白鳥先生のことは諦めて」
菜々は、もう名前さえも口にするなとでも言うみたいに、白鳥さんへの気持ちを捨ててしまえと言った。
いらないとしていた想いは、抱きしめてしまえば離すことなんて不可能で。嫌だ嫌だと拒否をする。
「どうしたって報われないじゃない。そのとき小町は、平気でいられない。前よりもっと、いられない。誰かにすがってもいいから。独りなんか絶対駄目。誠実でいてくれる相手がいるんだから、無理にでも次に進んで。――韮崎くんなら、小町はきっと好きになれる」
「っ!?」
その、菜々なら絶対にしないと信じていた誰かを利用する言い方が信じられなくて、真夏の太陽に灼かれた頭は一気に逆上した。