瞳が映す景色
「菜々が仕組んだのっ!? 韮崎のことっ!! あたしは、菜々のせいで韮崎にあんな酷いことしちゃったのっ!?」
強気だった瞳は、あたしなんかの苛立った声じゃ怯まない。
じりじりとコンクリートが灼ける、幾人かが往来する道端で、あたしたちは対峙していた。
「違っ。昨日、韮崎くんがやっと小町に動いたかは、私はそうなればいいって……っ」
「そうなればいいって何っ!? あたしが、韮崎を利用して楽になって、でもそれはきっと一瞬でまた利用してっ。……でも、あたしは韮崎をきっとどうやっても好きにはなれなくて、謝って謝って、それであたしがそのうち独りでも大丈夫になって韮崎を解放して……」
狡いあたしは、昨日、韮崎に言えなかった。きっと、どこまでいっても、韮崎とは友達でしかいられないと。
たとえ身体が繋がったとしても、心は友達でしか。
抱きしめられ、囁かれても、頷いても、冷静に判断出来たあたしが、昨日いた。
「……それで、韮崎は、でも、いいよってあたしを許すかもしれない。でも、後腐れなく色々出来てラッキー、とか、韮崎は思う人じゃない。……菜々は、そんなふうに韮崎を扱ってもいいって思ってたの?」
「だっ、だって、私は、韮崎くんはいい人だって思ってるけど、小町のほうがやっぱりどうしても大事で。小町が、限界まで抱え込むのは、もう見たくなくて……」
「だったら、他はどうでも良かったの?」
「……………………、そうよ」
嘘だ。後に退けないだけじゃない。だからそんなに恥じるみたいに泣きそうで堪えて。
あたしも同じだ。菜々のせいなんて思ってもないのに、押し付けてしまった。