瞳が映す景色

二ヶ月ぶり、くらいになるのか……、菜々と喧嘩別れして以来、こうして正面きって顔を合わせるのは初めてだった。


「そもそも、今日だけじゃなくて時たま、駅前じゃなくて、喧嘩したって聞いた直後から、お店を監視するみたいにこの近くにいたんだよね~」


青ざめる菜々をちらりと横目しながら、白鳥さんは得意げだ。だから助太刀なのだと、その行いに何一つ疑問も感じてないみたい。それが増長されればされるほど、菜々は白鳥さんから距離をとっていく。


「だからってなんで白鳥さんが」


「いい加減仲直りしたらどうかと思って。友達失くすなんて恐ろしいこと、むざむざ見過ごせないでしょう。――あっ、もう閉店だね~」


僕はもう帰るからどうぞごゆっくり、と白鳥さんはあたしに手を振ったあと、膝を曲げて菜々に笑いかけて何かを囁いた。


途端、まるで逃げ出すみたいに、菜々が白鳥さんから離れてカウンターに寄りかかってくる。


「えっ、どしたのっ?」


「違うの違うよっ!? 小町っ。チョコに釣られたんでもないし、あの人に助けてもらわなくてもちゃんと小町のとこ来てたからっ。謝りたかったし、韮崎くんからも土下座で小町を助けてくれとか言われるしっ」


ぐしゃりと、体温で溶けたらしい板チョコが菜々の手の中で曲がる。――ああそうか。前に、白鳥さんに聞かれたかも。菜々の好物を。ただの話の流れかと思ってたけど用途はあったのか。


決して、白鳥さんの功績にはしたくないと必死な菜々に、知らず笑みがこぼれる。


それはあたしだけではなかったみたいで、帰りかけていた白鳥さんも面白そうに笑ってた。


「自業自得とはいえ、僕随分嫌われちゃったなぁ。まあ、ちっちゃい子に嫌われても、痛くも痒くもないから平気さ~」

< 315 / 408 >

この作品をシェア

pagetop