瞳が映す景色
どちらにしても腹は立つのだとも、菜々は言い加えながら、勝手な思い込みで不快にさせてしまったならごめんと謝られる。
「菜々は、本当に白鳥さんのこと嫌いだね」
「あったり前よっ。私の友達何度も傷付けて振り回して。……まあ、意図的じゃないから、責められない部分もあるし、でも腹立たしいし……」
「ホント。菜々の仰る通りでございます」
嫌いだからと、全てを否定しないようにしてくれてるのは、きっとあたしの為で。そんなところが大好きで感謝はしていながら、やっぱりごめんねと思う。
「――でも、小町はあの人が好きなんでしょ」
「うん――」
「韮崎くんみたいな、絶対に小町を大事にしてくれる人を振ってまで、大好きなんでしょ?」
「うん。……韮崎に、聞いたの?」
「教えてくれた。土下座と共に。……もうっ。大学で突然土下座されて懇願とかないわ」
「……」
そんなことを、韮崎はしてくれていたんだ。
菜々と喧嘩別れしてすぐ、韮崎には言った。どうしても友達としか思えないと。
友達とホテルに行けて、肌を合わせられるような女だと罵られる覚悟で告げた返事に、あたしはきっと最終的には逃げ出す女だと言われ、逃げ出させない男が大半だと説教され、きっと韮崎は自分だからあたしが誘われたのだと悲しく幸せそうに微笑み、
これからも友達だと、赦された。
この二ヶ月間、韮崎は頻繁に連絡をくれ、そこまで甘えられないと言うあたしを無理矢理に連れ出してくれた。フットサルの後の焼き肉だったり、また車を出してくれて皆で日帰り旅行をしたり。あたしが笑うと、韮崎は嬉しいと言ってくれながら。
本当にもったいないと思う。けど、あたしはやっぱり。
どうしようもない自分に涙が滲む。
仕方ないわねと、小さな身体が抱きしめてくれた。