瞳が映す景色

「ずいぶん嫌われたもんだ。別に構わないけど~」


「ごめんね……」


「なんで謝られるのさ。平気なんだから」


「あたしのせいで白鳥さんを嫌いになっちゃったようなものだから」


「え~。『せい』って何~?」


言葉の端々に、時折こうして滲ませる自分に気付いたのは最近。でも、気持ちを認める以前から、思い返すとやってしまっていた。


昔は髪が長かったなんて、どうして言ったのか。


高校時代の出来事なんて、何気に話しちゃまずいなんて理解してる。


思い出してほしくない、のに、こうもさっぱり忘却の彼方に追いやれる白鳥さんに腹が立っているのか……参戦する気もないのに。


でも、


いずれ忘れられる日が来るまで、もう少し、好きでいさせてほしい。


「男の人苦手なの、菜々は。なのに、あたしのせいで白鳥さんに拉致られるは、別の人には公衆土下座されるわで昨日は怯え震えていました」


「なかなか簡単にはしないよね、土下座。そこまでしてくれるなんて、ちっこい子の彼氏? きっと心配だったんだよ~」


「違う違う。彼氏に怯えるってないでしょ。そうだね――とてもいい人間と、きっと会うことなんてない白鳥さんにも言わせてほしいくらい出来た人かな」


「ふ~ん。友達が沢山いて、羨ましいね」


拗ねたみたいに言われてしまい、でも、いつもへらへらした表情ばかりだから、そんな仕草も嬉しい。あたしは、少し意地悪なのかもしれない。


「一番大事な友達をなくさないでいれたのは、白鳥さんのおかげだよ?」


「っ」


「どうもありがとう」


「じゃあまた何かあったら拉致ってくるよ~」


盛ってお礼をすると、たちまち鼻高々で、無い尻尾が揺れた気がした。


無責任に無邪気な人に、あたしは今日も恋をする。






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②ー8・閑話休題的・忠犬白鳥捕物帖
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