瞳が映す景色

②ー10・爆ぜる。

―――――――――――――――――――――
②ー10・爆ぜる。
―――――――――――――――――――――




元々、迷惑かけられたとも思ってなかったけど、白鳥さんは言葉通り、毅然というか、ものわかりがいいというか、そんな感じになったように思う。


「じゃあね。仕事が山のようだから今日はこれで~」


「お疲れさま。頑張ってね」


新年営業初日から相変わらず通ってはくるし、相変わらず店先で食事を済ませていくけど、何か律しているのを感じるのは、もう勘じゃなくて経験則だ。


こうして、たまにお買い上げだけで帰っていくことも。


楽、だから、追及はしない。


他愛ない楽しい会話と福眼を堪能しつつ、終わりへ向かう残りの時間を過ごしていた。


穏やかだと、そこに居続けたくはなる。


望んでしまえば無限ループだ。


決心は時折鈍りつつも持続出来たのは、その場所が楽という以外理由は見つけられなかったけど。


いつも忙しくしている白鳥さんは、また今年度も受験や卒業式の準備、すでに取り掛かっている来年度の支度にと疲れていた。


二月。今年は雪の降る日が多くて、インフルエンザを心配してみたら、毎年予防接種を受けていると胸を張りながら誉めてほしそうで。常連客用のバレンタインチョコに希望通りの一言を添えると、その表情はみるみる間に破顔する。


「そうなんだよ。今日はとても疲れていて、甘いものが欲しかったんだよ~っ」


「それはなにより」


二ヶ月、というのは、過ぎるのが早かったように感じる。


やっぱり、楽しかった……んだろう。悔しいかな。




最後の夜、いつもと同じ、白鳥さんしかお客さまのいない夜。


いつも通りにプラス、お祝いの言葉と、またプリンを貰った。


あたしの好物だから選んでくれたのだと、二度目にやっと、確信する。




そうして、やっと、終わった。




< 347 / 408 >

この作品をシェア

pagetop