瞳が映す景色
ギリギリ間に合わせた一時間後の集合。場所はさっき別れたお店の前で、待ち合わせなのか正直よくわからないものだけど。
「……ごめん。遅れた」
「そんなことないよ。時間ピッタリだ」
簡易テーブルは仕舞われているからか、白鳥さんは歩道にある電柱に凭れかかっていた。組んでいる長い足の傍に鞄はなく、一旦大人しく部屋に戻っていてくれたのを確認する。
良かった。また風邪などひかれたら大変だ。
時刻は午後六時前。
駅前の安くて早いファミリーレストランで済ませてしまおうと提案すれば、あたしを待つ間に検索したのだと近くのイタリアンを希望される。
「ちょっ、ちゃんと部屋で検索してた? 外まだ寒……っ」
「指摘されるのそこなんだ~。――うん。大丈夫。ちゃんと部屋でね。車こっちに置いてあったら、も少し範囲拡大できたけど。それはまたいつか」
「いっ、いつかいらないっ」
「酷いね~」
軽やかに笑う白鳥さんは楽しそうだ。
お店が休みなの知らなかったのかな。コンビニ弁当は好きじゃないし自炊もしない、独りでお店に入るのは得意じゃない。そんな我が儘で自堕落な己を回避出来ることに安堵しているんだろう。
「少し歩くけど大丈夫? それよか行きたいお店、あるかな?」
「いいですよ。とくにないですし」
「……」
「っ!! ……いいよ。とくにないんだ。今日は独りでお菓子を食べて過ごそうとしてたくらいだし」
「ん。よろしい。でもお菓子はよろしくない、よね?」
思わず飛び出た砕けてない言葉にジト目で抗議され、余計なことまで添えて言い直す。
往来を楽しげに歩く白鳥さんとは裏腹に、あたしはなるべく離れて歩こうと、気付かれない程度に歩調を遅らせた。