瞳が映す景色
躊躇う様子は、やけに長く感じた。
白鳥さんは顔を俯けたり左右にしてみたり、しながら、あたしから精一杯その表情を見えなくさせて、
「…………だって、恥ずかしいじゃないか……」
中学生みたいな訳を白状した。
「っ……」
なんて――
「そっ、それにっ、……名前なんて呼んだら歯止めが……それをしちゃいけない人だって、ギリギリで踏みとどまる方法はそれしか……」
表情を隠す反動で耳は完全に晒されていて、きっと、照明の下なら真っ赤なんだろうと思い確かめたかった。それを見たい。でも、あたしは見てほしくない。
あたしもきっと、負けないくらいだから。
――ああ。なんて、愛しいんだろう。
本当にどうしようもない大人だ。子供みたいに我が儘で知らず恥ずかしがって。あたしに内緒で勝手な行動ばかり。
でも、愛しい。あたしはまだ、好きで好きで、仕方がないんだ。
「名前で疑われるなら、もうちゃんと呼ぶよ。これからも至らないところは直していく」
「……」
「だから、認めてよ。眠れなくなるくらい迷って迷ってなんて、もう絶対にさせない。あれは僕のせいだと思ってもいいよね。僕以外だなんて嫌だ。好きでいてくれるから、苦しめてた」
「……」
「ご飯が食べられなくなるなんて、ならないように誠実でいる」
「……」
「信じてもらえないなら、どこが好きか、どうしてだとか、いつだって言っていくから」
「……」
「頑ななのには何か訳があるの? 長い時間がかかってもいい。一緒に、解決させてほしい。――だから、お願いだから、どうか、僕のものになってほしい」
嬉しい。大好き。愛しい。
けど、同時にとても気持ちが悪い。
そんな相容れない感覚が同時にあるなんてこと……