瞳が映す景色
さっきから膝が震えている。……当然だ。そんな高いヒールの靴を履いてくるからだ。ちなみに、これも赤い。
異世界すぎて目眩がしてきた。玄関にもたれかかり、額に手をやる。
……馬鹿馬鹿しい。そんなことをしても、救いなんて降りてくるはずがないってのに。
「――先生、大丈夫ですか?」
「なんだ? 全く聞いてなかった」
「酷いですっ!」
「藁科……」
その時、隣の住人の出掛ける気配がした。見ると、ドアノブがゆっくりと動いていて。
「やばっ……藁科、ちょい入れっ!」
「えっ? わわっ!!」
思わず藁科を玄関の中への引き込んでしまった。
後悔はもう後の祭りだ。けど仕方なかった。家の前で先生先生と連呼されるのは危険だった。