瞳が映す景色
……
鍵とチェーンをすぐさま掛けると、ずるずると足の力が抜けた。這ってトイレに行く力もなくて、冷たさで足先が痺れるまで、崩れ落ちた状態のまま動けなかった。
何度か、こみ上げてきたものを飲み込む行為を繰り返していると、塩辛い涙が口内に入るのに気付いて我に返る。
どれだけの間そうしていたのだろう。玄関扉の向こうでは、変わらず誰かの気配があって。
誰かなんて、そんなの、ひとりしかいなくて。
扉に外からのアクションはなく。当然だ。おこがましい。とっくに呆れてるけど支離滅裂。
「……、」
それから、もうしばらく、外の気配がなくなるまで、漏らすことなくそれを感じていた。
後悔なんて、あたしはするに決まってる。
嫌われたら、新しい誰かが隣にいるのを見たら。そんなことなくても、もう、会えないのだし。……どんな未来にでも、後悔するのは解ってる。決定事項だ。
けど、こうすることしか、あたしには出来ない。
許せない。ごめんなさい。信じてる。近寄らないで。大嫌い。大好き。
苦しい思いなんて、ひとつでも少なくいてほしい。傷は浅いほうがいい。それでなくてもお互い抉られやすいのだから。
あたしなんかじゃ、こんなんじゃ、結末なんて明白だ。飛び込めない。
ずっと続くなんて理想、あたしには……。
あちこちに飛ぶ感情を、ぶつけられない。そんな我が儘、ぶつけない。
後悔が、いつか思い出になれる確率はどのくらいなのか。
わからないけど……。
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②ー11・全部。ずっと。
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