瞳が映す景色


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五月病、というのは、本当にあるのだと、身をもって実感する。




社会人としての、今までとは全く違う環境は、学生の緩さを痛感していて……。つい最近までは自分もそうだったのに、苦笑いしてしまうくらい。


職場環境や人間関係は、まだ深入りしてないからかもしれないけど普通なんだと思う。


仕事は、新入社員に社運をかけた内容のものを回すはずはないし、今は裏方の裏方みたいな経理の初歩を半分実践でメモをとる暇なく指導してもらっている。


小さなミスはそこそこ積もり、それに関しては、弱いなあと自覚しながらも落ち込んだ。けど、営業に配属された仲のいい同期を見ると、もっと大変で頑張っていると思う。


……勝手に病んでしまってる部分が大きいのは、自覚してる。


とりわけ、仕事のことだけが原因だった訳じゃない。三大欲求のうち、ひとつは関係ないにしろ、他ふたつを上手く補えない日常が続いていて、それに落胆し、負のループに陥っていた。


連休前に、遅くなった課の歓迎会を開いてもらい、新人の進捗状況に劣っている訳ではないと言われ、人とあまり変わらないと安堵する。浅ましいなと思いつつ、これを逃す手はないと少し浮上した。


連休は特に予定もなく、菜々は百貨店勤務のサービス業だから遊んでもらえなかった。ちょうど雅から連絡があって、久しぶりに遊んだくらい。




そうして、五月、連休明け。


歓迎会で多少取り戻したものの、他者との比較の浮上は、些細なミスでまた再下降する。……必要な書類を何枚かシュレッダーにかけてしまったのだ。上司との双方の確認ミスだったけど、あたしが気付ける範囲のことだった。


……少しの残業のあと屋外に出ると、あたしの心情を表すみたいな、肌に纏わりつく霧雨が、地面を徐々に濡らしていた。

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