瞳が映す景色

リンクするみたいに、ゲンちゃんは言う――白鳥さんへの仕返しでもあるのだと。


「いや、今となれば、お返しのほうが正しいんですけど」


「よく分かりません」


「沢山弄ばれてきましたから」


「っ、――ああ……」


……それなら、納得出来る。詳細まで知らなくても。


ゲンちゃんの今の行動も。悔しいけど、あたしだって、菜々のためなら彼女を優先する。


こういったときの天秤は、正確じゃなくていい。




帰りますと、ゲンちゃんは夜間出入口へと足を向けて、また振り返り、


「まだ何か?」


恨みがましいあたしの訊ねかたに動じることなく、置き土産を残していった。


「宇佐美さんが白鳥さんの相手だと、ギリギリで知れて助かりました。じゃなきゃ、こんなふうに出来なかったので」


「大事な彼女と一緒にいられないですしね」


「っ、……そうですね……」


照れた様子に少しだけ溜飲を下げてしまう。素直な人だと、また新たな印象が加わった。


「で、あたしはどうしてバレてしまったんですか?」


もう、どうでもいい。否定をすることが面倒で、取り繕う相手はたったひとりなものだから、あたしは真相に近付く。


「さっき、白鳥さんを迎えにいったときです」


「本当ギリギリですね。――残念」


そうして、ゲンちゃんは何故か謝罪混じりに遠い目をした。


「玄関先で立てなくなっていたとき、オレたちに連絡しようとしてたんですね。スマホ握りしめてて――連れ出す拍子に待ち受け点灯させてしまって」


「……え……っ」


「待ち受け画面、宇佐美さんでしたよ。……あれ、おそらく盗撮だと思うんで、消去なり訴えるなり、気持ち悪かったらしたほうがいいです」


教えてくれたことに心底感謝した。


常識あるアドバイスをもらい、ゲンちゃんは傘も借りてくれないまま急いで帰っていった。






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