瞳が映す景色

オレへのプレゼントだという淡い色合いの花束は、結局脅しに負けて頂戴することになった。缶切りで口を開けたビールの空き缶じゃあ、花束も泣いてるだろう。


「ところで、藁科……」


オレの個人情報とか……。


「そんなの。お誕生日やお住まいの場所くらいならなんとでもっ!」


くらいなら、ってことは……この先を考えると恐怖だ。


その珍妙な格好……。


「姉のものです。髪は今日だけこの色に。明日からは元通りです」


当然だ。


「……お姉さまは趣味がそんななのか。藁科も……」


「いえ。私はこんな残念では。姉に関しては、美人なのに、その使用方法を間違えてるって常々思います。いずれ会うことになるでしょうが、浮気しないでくださいね?」


「紹介も浮気も、そんな存在にはならんから安心しろ。――てか、ご両親は、その姿の藁科を快く送り出してくれたのか……?」


「旅行中です。紅葉狩りに行ってはどうかと提案したら乗り気で」


……だ、そうだ。


用意周到。

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