瞳が映す景色
そんなの……あたしだって同じで。
「……」
「ん? どうしてかな?」
毒は、もう吐ききってしまった。じくじくしている膿はあたし自身が治癒させる類いのもので、ぶつける弾丸は残っていない。
それでももっと、最高潮の動揺や後悔で……取り乱してしまうと思ってた。
けれど今のあたしはどうだ。
動揺はしてる。もうずっと、心臓が動きすぎて痛いんだから。
でも、凪いでいるんだ。
あたしだって白鳥さんと同じ。それが悔しくてたまらないよ。でも嬉しい。合わす顔などないのに。
そんな笑顔で迎えてくれることに、申し訳なさよりも勝る感情は、
恋愛のそれだ。
「同じだよ……」
「じゃあ、もっと喜んで?」
「無、理」
「まあ、可愛いから許してあげよう」
「なっ……!?」
掴まれていた袖から引き寄せられた。身体は一歩前へ。処置台のほうへ。
横たわる身体の片側を浮かせた体勢で、白鳥さんはもう片方の手もあたしに伸ばしてきて、腰に腕を回された。
「……また、痩せたね。折れちゃいそうだ」
「っ、……それは白鳥さんもっ」
「僕のせい?」
見透かされたあたしの身体は、何故易々バレてしまったんだろう。そんなところ、触れられたのは初めてのこと。
折れないのに、世界で一番の繊細さで包まれている。
顔を寄せられているのは下腹部のほう。熱を孕んだ呼吸がダイレクトに伝わって、
どうにかなりそう。
「……しっ、仕事も大変で……」
「仕事もってことは、僕もなんだね」
「そんなとこで喋らないで……っ」
止めてくれない言葉の応酬は、あたしを身体の奥底から熱くさせた。
「最低だとは自覚してるけど。でも、僕が原因なのは、なんでだろう――泣けるほど嬉しいんだ」
全てが僕のせいなら良かったのに――残酷なまでの執着も添えられた。