瞳が映す景色
……
「……仕方、ないから、いてあげる」
「――うん。ありがとう」
口から飛び出たのは、実に可愛げのない。なのにありがとうなんて……あたしは後悔するばかり。
でもこれからは、それでは駄目なんだ。伝えてしまったからには、もう少し、前進を。
「一緒に、いてくれるの?」
けれど初心者にはまだまだハードルは高くて、どうやらこうじゃなかったみたいで。
新たなお仕置きは、最初は軽く引っ張られ、耳の後ろを擽られるという、どう反応すればいいのかこれも正解は不明なもの。
けどいっか。思わず閉じてしまった目を細く開くと、何故か白鳥さんはご満悦だったから。
「なんでそんなこと言うの。そうしてほしいんだよ。このまま僕んちに攫って、ずっと帰らないでいてくれるっていうのもいいなあ」
「っ、それは……っ」
「嘘嘘。嘘じゃないけど、嘘でもある」
「……何それ」
「全てを、言葉にしたほうがいい?」
「何、を」
「今のこととか。僕がどれだけ、いつから、どんなところが好きになったかとか。一緒にいるっていう意味合いとか」
「……馬鹿にしないで」
「うん。ごめんね」
「わかってないけど、わかってるから」
「うん。――ありがとう」
潤み続ける視界の先の白鳥さんは、あたしを撫でてくれていた手を後頭部に回して力を込め、
自分の顔のすぐ傍まで引き寄せた。
床に膝をつけて体勢を変える。背筋を伸ばすと、やっぱり少し痩せた、憎らしいくらいの整った顔がある。
相変わらず綺麗だな。ごく緩く波打つ髪は気持ちいいことをもう知ってる。二重の幅とかも完璧だったんだ。鼻筋、ごつごつしてないんだな。唇が少し荒れている。
あたしといて、幸せだって感じてくれるといいな。