瞳が映す景色
「今日は、あのちっこい子と?」
「えっ、あ、ううん、菜々は違うよ。あの子デパート勤務だから、週末はあんまり休めないんだ」
「そっか。寂しい?」
「ちょっとね」
「今度、売り場行ってみる? それにしてもチョコレート屋さんって、そのまますぎて笑えるね」
「白鳥さんには当分、ていうか絶対来てほしくないと思う。……あたしみたいに採用されたとことかより、よっぽど目的あっていいと思うけど」
けれど菜々は、あたしがこういう状況になってからは、一切白鳥さんを嫌いだとは言わなくなった。少し腹は立つと隠さないまでも。
「それもアリだけど、どれだけ居る場で腐らず頑張っていけるかじゃないかな~」
ね、と諭され、隣を歩く白鳥さんに目線を上げると、頭を撫でてくれる。まだ数えるほどしか経っていない日の中で、あたしは白鳥さんの手のひらを大いに感じていて。
返せることを思い付かずに俯くと、その手のひらはそのうち離れていく。寂しい、と思うのは、秘密のこと。
まだ一週間なのに、その半分ほど顔を合わせていられたのは、白鳥さんのおかげで。今だけだよ、なんて見惚れる笑みで言う。
あの救急の翌日は家で寝ていた白鳥さんは、その翌日からはもう活動を再開させていた。
今日も、実は一緒にいることを誘ってくれていたけど、前々からの約束は大事だし、療養を促したりもしたのだけど……出掛けたのか。
「体調は問題ないの?」
「平気。ちゃんとあの病院にももっかい行ったけど、大丈夫だった。だからこれ、快気祝いだよ~」
差し出されたのはプリンで、もう平気とはいえ療養そっちのけでこれを買いに行っていたのかと肩を落としたけど、その気持ちを大切にする。
「ありがとう。美味しくいただきます」
「それはなにより」