瞳が映す景色

どうしても外せない用があるから――引く気のない藁科にそう言って、家の中という状況はどうにか脱することが出来た。けど、藁科はずっと後を追ってくる。


まあ……そうなるだろう。元々そういう計画で来ていたんだろうし。


完全部屋着だったオレは、ベッドの脇に脱ぎ散らかしたままだった昨日の服に袖を通し、慌ててコートとニット帽を着用し外へと飛び出した。帽子はせめてもの変装だ。




「……」


そっと後ろを振り返る。


高いヒールで不安定。これならダッシュすれば煙に巻くことも可能だな……。


「……」


途中、藁科は五回転んだ。振り返り盗み見ると、 小学生と肩を並べられる勲章ものの傷が膝小僧にあった。まだオレの家からさほど歩いていない。






……ああ。ったく。

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