瞳が映す景色
――……
「怒ってる?」
二度目となる白鳥邸への訪問。エレベーター内で無言だったあたしに、僅かに申し訳なさそうに白鳥さんは訊ねてくる。
「べっ、別に……っ、ただ、恥ずかしすぎる。色々と」
「そう?」
白鳥さんは悔しいかな通常仕様で。それは心臓の鋼鉄具合なのか、経験値の差か。
なんとなく理由がストンと落ちてこず、僅かに睨んで見上げても、それは柔らかな空気砲でしかなかったみたいだ。
「白鳥さんムカつく」
「え~、なんでさ~」
「あたしばっかどうしようもなくなってるからっ」
そうこうしてる間に白鳥さん宅の前で、促されるままに先にお邪魔する。
「ほらほら、僕が入れないじゃないかぁ」
押されながらもう少し進むと、小さな玄関内、背後では白鳥さんがチェーンまでしっかり施錠する音が響いた。
「コーヒーでいいかな? 他に欲しいものあったら買ってくるけど」
「お構い無くです」
「……」
つむじを、ぐりぐりと指で潰されまた抗議されてしまった。距離をとるとか、そういう意味合いではないのに。少し、それが怖いのだと呟かれたのは、一昨日のこと。
「白鳥さんと一緒のがいい。気は、使わないでね」
「うん――」
「白鳥さんちなんだから、あたしばっかり構わないで、好きにくつろいでくれなきゃ嫌だからね」
「ありがとう」
背後では、深めの息が吐かれた。
そうして、
「っ!?」
後頭部に人肌を感じる。
「じゃあ、好きにするよ」
そこに感じたのは白鳥さんのおでこで、位置的に首の後ろに熱い呼吸が当たる。
もう切り刻むことはなくなったけど、そこまで長くもないあたしのボブの髪は、白鳥さんのしてくることに無抵抗で。
晒されたのは、皮膚の部分。