瞳が映す景色
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約二時間後。暗闇の箱から外界へ出る。
明るい日差しに照らされ気付く。ひとつのことを終わらせて、まだ太陽があんな高い位置にある休日なんて久しぶりだった。
「眩し……」
……後ろは振り返らず歩こう。
上映終了後、帰れと伝えた。聡い藁科なら理解はしただろうし、もう満足しただろう。……駄目だ、こういう考えは。オレがまるで上位に立てる男みたいじゃないか。それ以外にも間違いだらけだ。勝手な物言いを心で謝罪する。
もう終わりだ。帰路につこうと足早になりかけた時、
「ゲンドーッ!!」
日差しの向こう、誰かがオレに手を振る姿があった。眼鏡を正しい位置に直して確認すると、それは友人だった。
やべ……アイツもこの駅利用してるんだった。
どうやら友人は機嫌がとてもいいらしく。
「うるせ。大きな声でゲンドー言うな」
「なんだよ~。厳しい道でゲンドー。スバラシイ名前じゃないか」
藁科の姿が視界に入る。途端、身体に緊張が走った。友人は藁科を知らないし、慌てるのも墓穴だというのに。