瞳が映す景色
「ゲンドー、目が泳いでるぞ?」
「なんでもねえよ。それより遅れるから行けよ」
――くすり……と、笑われた気がした。オレの横を他人のふりで通り過ぎる藁科が、笑っていた。
「ゲンドー。今日オマエやっぱ変だよ。だから麗しきお嬢さんにも笑われるんだ」
そんなの見つけるな。それに麗しくはない。あれは赤い魔女だろ。幸いなんかもたらさない、災いばかりを溢れるほど持つほうのだ。
「オレは元から笑われる顔なんだよ」
藁科との距離が開いていくほどに、身体は多少自由が利くようになっていった。
なかなか立ち去ろうとしない友人と会話を続けながらも、視線は違う方向を見てしまう。
他人が居たのが功を奏してか、はたまた要望を聞き入れてくれたのか。いやもう、そんなのはどうでもいい。藁科は、駅の方へ歩いていった。