瞳が映す景色
胸を撫で下ろした瞬間、何故かくるりと方向を転換し、藁科は駅前の小さな公園に向かった。
その行動はオレの場所からでも見渡せるものだから気が気じゃない。頼むから慎んだ行動をと切に願う。
しばらく散歩のようなことをしていた藁科は、空いていたブランコに乗り、足をさすっていた。
……そんな格好で歩くからだ。
しばらくすると見知らぬ子どもがやって来て、藁科はブランコを譲っていた。行き場を無くしたのか、噴水の方へと歩く。
そうして、前方から、また別の見知らぬ子どもが走ってきたのだが、それは後に続く悲劇への案内人だった。
「っ!!」
藁科とその子ども。ふたりは、勢いよく正面衝突した。
背中に魔女の呪いだとしか思えない圧が掛けられ、オレは大きくため息を吐く。
「またな」
今から初デートだとはしゃぐ友人と別れ、仕方なく公園へ走った。
……仕方ない。汚いと噂され、事実、濁りきった噴水の中に落ちて、藁科がしばらくの間浮かんでこなかったんだ。
落ち方はコントのように見事だったが賞賛されるべきことじゃない。唯一褒めてやるとすれば、携帯電話やらサイフやらが入った小さなバッグを、水没しないようにと咄嗟に手放したことくらいだった。