瞳が映す景色

「乾いたな」


「はい。……ご迷惑を……」


「くどいからもう言うな」


それでも謝るため再び土下座をしようとする藁科を制した。


「……はい」


ようやく、その下げたままだった頭を藁科が上げた時、突然のとある襲撃に背中から倒れそうになってしまった。後方にあるのは、クッション性も何もないフローリングで、それをどうにか堪える。


「っ!!」


「えっ?」


「っ、どうせっ、謝ってるのはさっきのことだけだろっ。……今までの行い全てだったら、聞いてやる」


それなりのダメージをくらってしまい、焦って少し噛んでしまう。


藁科が顔を上げるために動いた時、甘い匂いが香ったんだ。襲撃の正体は、悔しいがそれだった。




……少し、驚いただけだ。


シャンプー等は使っただろう。けど、オレの家のはあんな匂いじゃない。専用のものを持ち歩いていたわけでもなさそうなのに。使う人間が変わるだけでこうも違うのかと驚いただけだ。


「じゃあ、もう謝りません。謝ったら、そこで終わりにされちゃうかもしれないから」

< 48 / 408 >

この作品をシェア

pagetop