瞳が映す景色
「乾いたな」
「はい。……ご迷惑を……」
「くどいからもう言うな」
それでも謝るため再び土下座をしようとする藁科を制した。
「……はい」
ようやく、その下げたままだった頭を藁科が上げた時、突然のとある襲撃に背中から倒れそうになってしまった。後方にあるのは、クッション性も何もないフローリングで、それをどうにか堪える。
「っ!!」
「えっ?」
「っ、どうせっ、謝ってるのはさっきのことだけだろっ。……今までの行い全てだったら、聞いてやる」
それなりのダメージをくらってしまい、焦って少し噛んでしまう。
藁科が顔を上げるために動いた時、甘い匂いが香ったんだ。襲撃の正体は、悔しいがそれだった。
……少し、驚いただけだ。
シャンプー等は使っただろう。けど、オレの家のはあんな匂いじゃない。専用のものを持ち歩いていたわけでもなさそうなのに。使う人間が変わるだけでこうも違うのかと驚いただけだ。
「じゃあ、もう謝りません。謝ったら、そこで終わりにされちゃうかもしれないから」