瞳が映す景色

今日の藁科はこっちの調子が狂う。


いつもだったら、泣きそうでも、きっともっと上手く隠す。もう少し、感情を抑えていたと思う。距離感に、こんなに警戒しなかったような……。


オレの家なのに、さっきからずと立ったままなのに気付いた。馬鹿らしくなって無造作に腰を下ろすと、持っていたコンビニの袋を漁り、飲み物をテーブルの向こう側の藁科に渡した。


「ポップコーンのお返しだ。あと、これは花のほうの。これでプラマイゼロだからな」


一緒に、さっき観た映画のパンフレットも渡した。


「レモンティーだっ! 私の好きなもの、覚えててくれたんですね」


「あれだけ毎日同じもん飲んでれば分かる。授業中でも机の隅に置きやがって」


「ペットボトルだと蓋があるけど、この紙パックのしか美味しくないんです。味が違うんです。大きいから一度じゃ飲みきれなくて。ごめんなさい」


「ずっとコンビニで時間潰してたんだ。何か買わないと出られんだろう。代金受け取らないんなら、そういうので握らせるしかないしな……苦肉の策だ」


手持ち無沙汰の波に心が飲まれ、しなくてもいい言い訳を連ねてしまった。

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