瞳が映す景色
「優しいですね」
「うるせっ。……それ飲んだら帰れ、な?」
「――、はい」
ストローを挿し、ハムスターの食事のように、藁科はレモンティーを飲み始める。もしかして身体が冷えているかもしれないから温かい飲み物のほうが良かっただろうかと考えた自分は、決して外へ出してはいけない。
別段何気ないことが、それが気遣い優しさだったとしても、こうなってしまった今は控えなければならないなんて。間違った関係だと、早く気付いてくれればいい。
目の前に座る苦悩の原因は、もう朝の赤い魔女じゃなく。似合っていないことなど本人も自覚していたんだろう。やけに爽快な顔をしている。
淡い空色のワンピース。きっと誰もが、歳相応、 こっちのほうがいいと言うに決まってる。カラフルな店員に任せると言ったのに、色の選択を迫られた記憶は消してしまいたいが。
化粧も、多少残っているが、赤い唇が通常に戻っただけでずいぶんマシ。
玄関に置いてある、茶色のフワフワした短いブーツなら苦労せずに歩けるだろう。もちろんペタンコだ。