瞳が映す景色
「今日はありがとうございました。お誕生日、おめでとうございます」
何度も聞いた祝いの言葉を残し、藁科は帰っていった。
部屋の窓から見下ろす道に藁科の姿。フワフワしたブーツは店員の見立て通り似合っていて、歩きやすそうだ。
しゃんと伸びた背中には、茶色のクルクルした髪が揺れ、その透き間からは、あの歳特有の翼も見えた。
誰かと過ごす誕生日なんて、久しぶりだった。
笑ったほうがいいとは言った。けど……楽しそうにはしていたが、今日のことはきっと、藁科のいい思い出にはならない。
だったらどうして? 今日、それを示してやれなかったんだろう。
きっと……いつもと違う藁科の姿を見て。
きっと……いつもより少しくだけた様子で話す藁科と接して。
きっと……いつもより、ヒールのせいで近くなった目線に驚いてしまって。
魔女の呪い、催眠術、悪い波。それらに溺れた。
早く浮いてこなければ、いけない。
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①ー3・赤き魔女
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